@phdthesis{oai:rakuno.repo.nii.ac.jp:00003800, author = {Okubo, Torahiko}, month = {2017-09-19, 2017-09-19}, note = {Thesis, 抗菌薬が人医療および獣医療において広く用いられるのに伴い、薬剤耐性菌の出現と増加が公衆衛生学上の問題として世界的に懸念されている。また、薬剤耐性菌がもつ耐性遺伝子は、その多くが非病原性の環境細菌に由来するとみられていることから、現在蔓延している耐性遺伝子は、環境細菌から病原性細菌へと伝達されてから拡散したものと考えられている。これに加えて、合成抗菌薬に対する耐性遺伝子を染色体上にもつ細菌が報告されている点や、永久凍土層や洞窟などの隔離条件下からも耐性菌と耐性遺伝子が検出されている点から、耐性菌と耐性遺伝子は人為的な抗菌薬の使用による選択圧の有無に関わらず、自然環境中に存在しているものと予見されている。本研究では、上記の仮説を補完しうる知見を収集するため、絶対的抗菌薬非存在環境として南極のアイスコアを選択し、その中に含まれる耐性遺伝子の検出を目標とした。まず第1章では、氷サンプルの安全かつ十分なクリーニング方法を立ち上げるため、南氷洋およびオホーツク海で採材した海氷をサンプルとして、氷の洗浄および氷からのDNA抽出方法を検討した。また、海氷中の細菌叢を16S rDNAに基づく分類で特定し、その構成を両サンプル間で比較した。続いて第2章では、上記のクリーニング方法に基づいて実際の南極アイスコアを処理するとともに、含まれる微生物叢をメタゲノム解析によって網羅的に特定した。第3章では、海氷および南極アイスコア中から薬剤耐性遺伝子の検出を試み、検出した遺伝子について既知の遺伝子との比較を行なった。第1章における検討の結果、氷サンプルの洗浄方法が開発された。また、海氷に含まれる細菌叢を南氷洋とオホーツク海とで比較したところ、門レベルあるいは網レベルの広い分類ではおおむね似た傾向を示したが、科レベルや属レベルの詳細な解析で明確に菌叢が異なることがわかった。また、オホーツク海の海氷はバクテロイデス門の細菌を多く含むことが特徴であった。海氷を対象とする研究は数が少なく、また本実験で用いた採材地域でのサンプリングは過去に行なわれていないため、本研究の結果は海氷や低温環境中での細菌叢の構成に関する新たな知見を加えるものとなった。第2章では、1,670年前および2,860年前の南極アイスコアについて、細菌および真菌の構成をメタゲノム解析で特定した。グリーンランドなどのアイスコアを対象としたメタゲノム解析の既報と比べ、南極アイスコアのメタゲノム解析では遺伝子のヒット数が大幅に少ないことが特徴であったが、これは南極(ドームふじ基地)が周囲から隔絶された環境にあることが影響したものと考えられた。一方、2,860年前の氷については、デイノコッカス‐テルムス門の細菌が極端に多く検出された。本菌は極限環境微生物として知られており、ドームふじ基地における南極アイスコア中の微粒子の起源であるオーストラリアの砂漠環境にも分布しうる細菌であることから、これは細菌の付着した微粒子が当該アイスコア中に多量に含まれていた結果であると考えられた。アイスコアを対象としたメタゲノム解析は本研究が初報告であることから、今回得られた南極アイスコア固有の特性が今後の他のアイスコア研究の参考となることが期待される。第3章においては、南極アイスコアのうち約1,200~1,400年前の氷(サンプル名DF-63.5)から、sul2-strA-strBの耐性遺伝子クラスターを検出することに成功した。この遺伝子群は現代でも非常に広範な種類の細菌が保有していることから、この遺伝子は古くから環境細菌が保有しており、その細菌が南極の氷にトラップされていたことが予想された。また、DF-63.5から得られた遺伝子の塩基配列が現代の当該遺伝子と相同的であったこと、およびこの遺伝子群を組み込んだ形質転換株(大腸菌)が抗菌薬耐性を発現したことから、今回得られた耐性遺伝子群は現代の相同遺伝子と極めて近縁であることが確認された。さらに、耐性遺伝子が単体ではなくクラスターとして検出されたことから、人為的な抗菌薬使用が無い環境においても、薬剤耐性遺伝子がまとまって細菌間を移動していることが考えられた。これらに加え、sul2遺伝子が合成抗菌薬であるサルファ剤に対する耐性遺伝子であることから、合成抗菌薬の発明以前にもその耐性遺伝子が存在しうることが改めて示された。以上の成績から、抗菌薬の非存在下においても薬剤耐性遺伝子が存在することが証明された。これまでに永久凍土層や南極表層の雪などからの耐性菌および耐性遺伝子の検出報告はあるが、南極アイスコアという完全に外界から隔絶された環境からの報告は今回が初めてである。抗菌薬耐性菌の出現と蔓延を予見するためには、それらの起源や環境中における動態を明らかにすることが必要であることから、本研究の結果は抗菌薬の選択圧非存在下における耐性遺伝子の存在を証明したものであり、新たな薬剤耐性菌対策の構築に有用な知見を提供した。}, school = {酪農学園大学}, title = {Studies on Microbial Diversity and Antimicrobial Resistance Genes in Sea Ice and Antarctic Ice Cores}, year = {} }