@phdthesis{oai:rakuno.repo.nii.ac.jp:00005508, author = {Sato, Tomomi}, month = {Mar}, note = {Thesis, 先進国における新規抗菌薬の開発が停滞している一方、ヒトに対する抗菌薬の不適切な使用を背景として新たな薬剤耐性菌が増加している。そのため薬剤耐性菌の出現と拡散は世界的脅威となっており対策が必要とされている。さらに医療現場だけでなく、家畜に対しても多くの抗菌薬が治療および成長促進目的として使用され、それに伴う薬剤耐性菌が出現している。動物で出現した薬剤耐性菌は獣医療分野の治療効果を減弱させるほか、畜産物等を介してヒトに伝播することが危惧されている。世界保健機関(WHO)は2011年、世界保健デーで薬剤耐性菌の問題を取り上げ、薬剤耐性菌の抑制と減少のためにヒト、動物という垣根を超えた一体的な取り組み(ワンヘルス・アプローチ)の必要性を訴えた。この考えは国際的に受け入れられ、薬剤耐性に関するワンヘルス・アプローチの取組が強化されている。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)はわが国において院内感染の主要な原因である。MRSAは黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus が可動性遺伝子カセット(SCCmec)により運ばれるmecA遺伝子を外部から獲得することでメチシリンに対して耐性を獲得する。MRSA はヒトへの病原性が非常に強く、感染した場合に死亡する例も多い。そのため医療現場ではMRSAに対する様々な対策が取られているが、2014年の厚生労働省の調査によると入院患者からのMRSAの分離率は49.1%と諸外国に比べ非常に高く、MRSAの制御は院内感染対策の最優先課題の一つである。海外では家畜が高率(11-46%)にMRSAを保有している事実が報告されている。家畜から分離されたMRSAはMulti Locus Sequence Typingで主にST398に型別され、獣医療で多く使用されるテトラサイクリン系抗菌薬へ高度耐性を示すなど、医療現場由来株と性状が異なることから「家畜関連型Livestockassociated(LA-)MRSA」と名付けられ、新型のMRSAとして注目された。LA-MRSAは、家畜にとどまらず医療現場へ侵入し、院内感染を起こした報告もあることから、家畜―ヒト間のMRSAの伝播防止対策のために、家畜現場におけるMRSAの保菌状況に関する調査が海外で活発に実施されている。わが国でも毎年多くの抗菌薬が家畜へ使用され、その量は医療現場の使用量のおよそ2倍とされる。家畜由来薬剤耐性菌の出現への懸念から、その動向は農林水産省の家畜由来細菌の薬剤耐性モニタリング事業(JVARM)により監視されている。しかしJVARMによるモニタリングは大腸菌やカンピロバクターなどを対象菌種としており、MRSAの動向は明らかにされていない。本研究では、ワンヘルス・アプローチに基づき、わが国の家畜におけるMRSAの現状の解明とヒトへの伝播防止対策への応用を目的とした。第1章では、家畜におけるMRSAの分布状況を明らかにするため、国内における畜産地域の1つである茨城県の豚100頭からMRSAを分離した。続いて第2章では、より詳細に国内におけるMRSAの分布状況を調査するため調査対象家畜および対象地域を拡大し、北海道の牛と豚の合計436頭からMRSAの分離を試みた。また同時に、MRSA同様にSCCmecを保有し、SCCmecのリザーバーとされるメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)、およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を分離し性状解析を実施した。最後に、第3章では家畜由来MRSAとヒト由来MRSAとの関連、および食肉がMRSAの伝播媒体となる可能性について検討するため、家畜、食肉、ヒト由来MRSAの性状を比較した。第1章における研究の結果、茨城県のと畜場搬入豚100頭中8頭(8%)からMRSAが分離された。分子疫学解析の結果、海外のLA-MRSAの1つであるST97/SCCmec Vが分離され、テトラサイクリン耐性、マクロライド系感受性、リンコサミド系耐性とLA-MRSAに特徴的な薬剤感受性パターンを示した。日本では多くの家畜を輸入しており、海外から持ち込まれた可能性が考えられた。本研究では、海外で流行するLA-MRSAに類似するMRSAが、わが国の豚にも分布することを初めて明らかにした。第2章では、北海道のと畜場に搬入された豚217頭、牛219頭からMRSA、MRCNS、およびMSSAの分離を行った。MRSAは豚および牛から分離されなかったが、6-44%のMRCNSが、21-70%のMSSAが分離された。さらに、豚由来MSSAはCC9及びCC398、牛由来MSSAはCC97が優勢なタイプで、海外のLA-MRSAと遺伝子型が同じMSSAが分布していることが明らかとなった。今回得られた結果より、日本の家畜におけるMRSAの保菌割合は海外に比べ低いものの、今後海外と同じLA-MRSAが発生するおそれがあることが示唆された。第3章では、第1章で分離された豚由来8株、分与を受けた食肉由来8株、牛乳房炎由来7株、ヒト由来100株のMRSAを対象に分子疫学解析を実施し、その性状を比較した。結果、牛乳房炎由来、食肉由来、ヒト由来市中感染型MRSA(CA-MRSA)が非常に近縁であったことを明らかとした。これら近縁なMRSAは日本の市中で近年急激に広まっているタイプのMRSA(CA-MRSA/J)で、牛および食肉からの分離報告は本研究が初めてとなった。これまでの調査より、日本の家畜におけるMRSA分布状況は非常に低く、CA-MRSA/Jの分離報告は無い。また、食肉から分離されるMRSAは多くがヒト由来で、ハンドリングなどによる汚染であることが疑われている。こうした背景より、本研究において食肉由来MRSAの汚染源を特定することはできないが、ヒト由来であった可能性が高いことが考えられた。本研究において牛―食肉―ヒト間において、何らかの伝播経路が存在しうることが示唆された。以上の成績から、わが国の豚および牛のMRSA、MRCNS、およびMSSAに関する新たな分子疫学情報を提供することができた。さらに、牛、食肉、ヒト由来MRSAに遺伝学的関連があり、これらの間で伝播経路が存在する可能性を示した。本研究により、伝播経路を遮断するという、新たな薬剤耐性菌対策を構築するための有用な知見を提供することができた。}, school = {酪農学園大学}, title = {Studies on molecular epidemiology of methicillinresistant Staphylococcus aureus originated from livestock animals, meat products, and humans}, year = {2018} }